シルバーカーを押して歩く父との散歩
年配の父母
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実家の父は90歳、母は87歳になります。
ディケアと訪問看護などの介護サービスを利用しながら、今でも二人で暮らしています。
両親共に長く生きていてくれる幸運に感謝していますが、
私も50代後半、夫も還暦を迎え、超高齢化社会の縮図のような我が家です。
これから起きて来るだろう両親の介護や自分たちの老後のことなど心配がないわけではありません。
母は、年齢の割には足腰がしっかりしていて、
月に1度の通院も週に2度の買い物もバスに乗って自分の足で歩いて行っています。
どこからどう見ても88歳の老人の母が、しっかりとした足取りで出掛けていく姿は、
頼もしくもありちょっと切なくもありです。
父の方は80歳を過ぎた頃から病気がちになり、
10年間で2つの癌と脳梗塞を患い生死の淵を彷徨いましたが奇跡の回復を果たし、
なんと癌が消えるという快挙を成し遂げました。
足が不自由になってしまった父
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しかし、年齢にはいつまでも勝てるわけはないですね。
2年ぐらい前から歩き方や動作がぎこちなくなり、
パーキンソン症候群という病名をいただいてしまいました。
父の性格は前向きで、癌を患った時も決して諦めませんでした。
放射線治療や抗がん剤だけでなく民間療法も取り入れて、
手術を受けずに2つの癌を消した人です。
治療の合間に、囲碁クラブに行ったり温泉旅行に行ったり、俳句の本を出したり
人生を最期まで楽しむをモットーにしていました。
でもさすがに歩くことがままならないパーキンソン症候群には成すすべもなく、
外に出ることもなくなり、日がな一日ぼーっとテレビの前に座っているだけになってしまいました。
母に買い物に誘われても、杖を持って玄関を出た途端に「やめた」と戻ってしまう。
父の足には杖だけでは心もとなく、かと言って車椅子は父のプライドが許さないでしょう。
私だってまだまだ父に自分の足で歩いて欲しいのです。
ボックス型のしっかりしたシルバーカー
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父をまた外に連れ出したい、私の願いに応えてくれたのが
ホームセンターで見つけたシルバーカーでした。
お年寄りがシルバーカーを押しながら買い物している姿を見て、
父もシルバーカーを押したら散歩や買い物に行けるのじゃないかと思いました。
もちろん私や母がサポートしながらですが。
さっそくホームセンターに行って父に合いそうなシルバーカーを探しました。
お年寄りにも扱いやすいような小型で軽い形が多く、
父に合う希望の形はなかなか見つかりませんでしたが、3件目の店で見つけました。
痩せて40キロ台の体重になっていたとはいえ、
男の父の身体を支えられる頑丈さを持っていて、
ボックス型になっていて蓋をすると椅子になって歩き疲れたら座って休める形で、
重さも大きさも私の手におえるし、私の軽自動車に積んで運べるシルバーカーです。
難は華やかな色のチェック柄で、男の父には派手かなと思いましたが、
老人にはちょっと派手目な方が明るい気分になれていいかもと思いました。
手ごろなシルバーカーよりはちょっと値がはりましたが、
父が使わなければ母に使ってもらおうと購入しました。
シルバーカーと日課になったお散歩
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買ってすぐに父と母と3人でお出かけをしました。
真っ盛りの夏、近くのスーパーでソフトクリームを食べようということになりました。
車からシルバーカーを下して、父に押して歩いてもらいました。
ゆっくりゆっくり押して歩いて行く父、これはリハビリにもなります。
ちょっと買い物をして、シルバーカーのボックス椅子に座ってソフトクリームをなめて、計画は大成功でした。
それからはディケア以外の週2日、日課のようにお散歩をしています。
3人で歩いているゆったりと流れる時間が心地良いのです。
シルバーカーを押しながら歩く父に寄り添って歩く母、
私はちょっと離れて歩きながら、なんだか涙ぐましい気持ちになりました。
60年以上連れ添って歩いてきた夫婦、二人とも背丈が縮んでしぼんではいても、
その空間だけに美しく澄んだ空気が流れているような気がしました。
今は冬で散歩はお休みですが、まもなく春がやって来ます。
近くの公園に続く遊歩道には桜並木があります。満開の桜の下を父と母と歩くのが今の希望です。