シルバーカーで渡れるようになった横断歩道。
渡りきれない横断歩道
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私の祖母は一つの信号で横断歩道を渡り切れないほど歩くのがとても遅く、
そのためにお散歩もお買い物もすることをやめてしまっている日が半年以上続いていました。
毎日楽しみにしていたはずのお散歩やお買い物をしなくなってからというもの、
ほとんど自分の部屋のベッドで上を向き、ボーっとしていました。
いわゆる寝たきり状態でした。わたしはいつもそれを見るたびに心が痛くなっていました。
迷惑をかけるのが嫌な祖母だからこそ、自らおとなしくしているのはどうしても辛かったので、
シルバーカーがあれば外出が出来るのではないかと
家族で話し合い、敬老の日にプレゼントすることにしたのです。
最初は「ありがとう。使ってみるよ。」とはいうものの、自信がないのか眺める日々が続きました。
ですが、座ってみたり、どれくらいの量ものが入るのか確認してみたり、そんな日々が続きました。
その時間だけでも楽しそうにしている姿を見れることが
とても嬉しかったのですが、それでも外出までには至りませんでした。
ですが、ある日、「ちょっと横断歩道を渡りきれるか心配だけど、外に出てみようかな。」
と言ってくれたのです。
シルバーカーは座ることが出来ます。高さも自分の高さを選べます。
シルバーカーを押しながら歩くので、前にこけることもなく、
少し歩いてみてしんどくなれば座って休む事も出来るのです。
シルバーカーと、何ヶ月ぶりかの外出
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それを聞いて安心した祖母が、本当に何か月かぶりに外出しようと自分から言ってくれたのです。
それだけで涙が出そうな出来事でした。
最初の日は心配だと思ったので、私がついて外に出ました。
それはそれは嬉しそうで、一歩一歩確実に歩きました。
問題の信号でした。国道の信号なので、横断歩道はとても長いうえに信号は比較的短いのです。
20代30代の人でもまぁまぁいそがなくてはならない程度の時間しか青信号ではない感じです。
それを、若い人の何倍も歩くのに時間がかかる祖母は、不安で仕方ないと思います。
それでも、シルバーカーがあるおかげで渡ってみようと
思ってくれた前向きな気持ちがとてもうれしく、応援したくなりました。
天気の良い日でした。
信号までいき、青信号を待ちます。青信号になると同時に一緒に歩きだしました。
みんながどんどん追い越していきますが、とにかく渡り切ることが大事なので、
一緒にそれでも急ぎすぎず、確実にシルバーカーを支えにして歩きました。
祖母はもう必死でした。ピコピコと信号がなりだしましたが、
なんとか赤になる前にわたり切ることが出来たのです。
わたり終わるとすぐにホッとしたのか、シルバーカーに腰をおろしました。
シルバーカーのおかげで毎日散歩が出来るまでに
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「久しぶりに渡れたねぇ。」と息を切らしながらほほ笑んでいました。
泣いてしまいました。
スーパーで、亡くなった祖父のお供えのあんぱんを買って、
また帰りにその国道の横断歩道を渡りきりました。
その日は早くに寝ました。とても疲れたのでしょう。
ですが、久しぶりに生き生きとした祖母を私たちは見ました。
それは本当にシルバーカーがなければ見れなかった笑顔でしたし、外出することもなかったと思います。
きっと、同じようなお年寄りの人がたくさんいて、
それを支えようとしてきた人達がいたからこそうまれた商品なのだと思いました。
これからもきっとお年寄りを支える一つなのだと思います。
どんどん形も変わっていくことと思いますが、お年寄りやそれを支える
家族や身内の人を助ける大事なものであることに変わりはないと私は実体験を通して思っています。
それからリハビリのように祖母は外出を繰り返し、
ほぼ寝たきりだった状態から毎日散歩が出来るまでなりました。
それは家族だけではなく、祖母本人にとって何より
幸せなことだったのだと祖母の生き生きとした様子を見て感じています。